学習塾のおすすめフランチャイズや加盟費・ロイヤリティの相場、どんなチェーンを選べばいいのかを紹介します。学習塾のタイプや塾業界の動向も解説。少子化の現代で塾を経営することに不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
塾業界の動向
少子化が続く現代社会において、学習塾のターゲットである子どもの数は減り続けています。しかし、子どもの数と反比例するように、教育への関心は高まり続けています。
出典:令和5年度学校基本調査(速報値)について公表します|文部科学省
グラフは各種学校への進学数の推移を示したものです。近年の増加率は緩やかですが、大学への進学数は昭和25年から増え続けています。これは大学に通いたいと考える人、わが子に高度な教育を施したいと考える家庭が増えていることの裏づけといえるでしょう。
最近は学習塾以外にも動画教材や大人向けのスクール、乳幼児向けの英語教材など、さまざまな教育サービスが人気を集めています。教育に対する関心が高まり続ける今の社会情勢は、学習塾業界にとって追い風といえます。
フランチャイズで開業できる学習塾の種類
フランチャイズで開業できる学習塾は大きく3種類に分けられます。
補習塾
補助塾は小中高校の生徒を対象にした塾で、学校の成績アップや授業についていくことを目的に補修を行います。小学1年生から高校3年生までの生徒が対象で、1人の生徒が最大で12年間通うことになります。1人あたりの通う年数が長く、収益が安定しやすいタイプです。
その反面、1人あたりの授業料は割安です。売上アップを目指すには進学塾よりもたくさんの生徒を集めなければなりません。
進学塾
進学塾は主に高校受験を控えた中学生、大学受験を控えた高校生の受験対策を行います。授業料が高く、夏期講習や合宿などの特別プランの提供もあり、生徒1人あたりの単価が高くなりやすいです。
その反面、生徒の通う期間は短いです。2年生後半や3年生になってから通う生徒が多く、生徒は受験が終われば塾をやめてしまいます。継続して集客しなければならず、補習塾に比べて集客にかかるコストがかさみやすいでしょう。
オンライン塾・映像塾
オンライン塾・映像塾はライブ配信や録画の動画、Web上のテキストや問題集を使って授業を行います。塾によってはスマホやタブレット、PCを使って自宅から授業に参加できます。授業用の動画やテキストは本部が配信するため、講師を雇う必要はありません。塾を開くための土地や建物にかかる費用、講師に支払う人件費がなく、低コスト・低リスクで塾を開けるでしょう。
その反面、オンラインでの全国展開のためライバルが多いです。「自宅では集中できないから」と教室のある塾に通いたいというニーズもあり、通常の塾とは異なる集客戦略が必要です。
学習塾の指導スタイル
学習塾の指導スタイルは大きく「個別指導」と「集団指導」に分けられます。
個別指導
講師1人が最大3人の生徒を指導するスタイルです。講師は生徒を細かく見られるため、一人ひとりに合ったペースでの指導、その生徒の特徴を捉えた教え方ができるでしょう。そのため学習効果が上がりやすく、顧客満足度も高い傾向にあります。
ただ、講師の人数が必要なため、人件費が高くなりやすいです。
集団指導
講師1人が4人以上の生徒を指導するスタイルです。個別指導よりも少ない数の講師で塾を運営できるため、人件費を抑えやすいです。全員で一緒に授業を受けるため、生徒同士の仲間意識が強く、学習に対するモチベーションも上がりやすいでしょう。
ただ、生徒一人ひとりのペースや特徴を踏まえた指導は難しいです。授業のペースについていけず、途中で塾をやめる生徒も出るかもしれません。
学習塾のフランチャイズにかかる費用
フランチャイズで学習塾を開くための費用は「初期費用」と「ロイヤリティ」に分けられます。
初期費用
フランチャイズで学習塾を開くための初期費用は、700万~1,000万円ほどが相場といわれています。加盟するチェーン、店舗の面積や立地などによりかかる費用は異なりますが、初期の運転費用と合わせて3,000万円強を用意しておくといいでしょう。初期費用や運転費用を抑えたい場合はオンライン塾・映像塾がおすすめです。
条件や加盟するフランチャイズにより異なりますが、費用の内訳はおおむね次の通りです。
- 加盟費
- 研修費
- 店舗取得費
- 店舗の工事費
- 講師の採用費
- 備品や教材 など
ロイヤリティ
フランチャイズに加盟すると「ロイヤリティ」として、月々の売上の一部を本部に支払うことになります。ロイヤリティには毎月決まった金額を支払う固定制と、売上げの何%かを支払う変動制があります。学習塾は変動制のチェーンが多く、売上の10~15%が相場といわれています。
学習塾のフランチャイズの選び方
学習塾のフランチャイズを選ぶ5つのポイントを紹介します。
塾のタイプ
学習塾のフランチャイズを選ぶ1つ目のポイントは「塾のタイプ」です。補習塾や進学塾、オンライン塾など、どんな塾を開きたいのかまずは決めます。経営を安定させやすい補習塾、生徒1人あたりの単価が低い進学塾、コストを抑えやすいオンライン塾というように、タイプごとの特徴を踏まえて考えましょう。
指導方法
学習塾のフランチャイズを選ぶ2つ目のポイントは「指導方法」です。個別指導は講師数が多く人件費もかさみやすく、運転費用を抑えたいなら少ない講師で運営できる集団指導がおすすめです。ただ、集団指導は生徒一人ひとりのペースに合わせた授業が難しく、塾をやめる生徒が増えやすいかもしれません。
チェーンの評判
学習塾のフランチャイズを選ぶ3つ目のポイントは「チェーンの評判」です。合格率や指導の丁寧さなど、塾の評判は集客力に直結します。保護者からすれば、塾は大事なわが子を預ける場所です。
「〇〇大学の合格率xx%」「成績xx%アップ」などの数値で表せる実績だけでなく、「教え方が丁寧」「勉強のやり方やモチベーションの保ち方まで教えてくれる」など、数値で表せない要素も大切にしましょう。SNSやレビューサイトでチェーンの口コミを調べるのもおすすめです。
本部の集客施策
学習塾のフランチャイズを選ぶ4つ目のポイントは「本部の集客施策」です。テレビCMやWeb広告を流しているか、どんな広告を流しているか、どのように生徒を集めているかなど、本部が行う集客施策をチェックしましょう。
各教室でキャンペーンやマーケティングができるのかも確認しておきたいです。生徒紹介キャンペーンや教室公式SNSアカウントの運用などができると、生徒を集めやすくなるでしょう。
本部の方向性・理念
学習塾のフランチャイズを選ぶ5つ目のポイントは「本部の方向性・理念」です。フランチャイズは個人塾とは異なり、本部の方針やマニュアルに従わなければなりません。本部の方向性や理念に納得できないと、塾経営が嫌になるかもしれません。自分の理念や方向性に近いチェーンを探すこと、説明会や相談会に参加してチェーンとしての考え方を知ることが大切です。
学習塾のおすすめフランチャイズ5選
学習塾のなかでも有名なチェーンを5つ紹介します。
松蔭塾
- 創業43年の老舗
- ロイヤリティなし
- 低コストで塾を開ける
松蔭塾は創業43年を超える老舗の塾チェーンです。塾チェーンは他業態と比べてロイヤリティが割高ですが、松蔭塾は何とロイヤリティ0円。そのうえ独自の教材システムを使うため、講師人件費もかかりません。
15坪ほどのテナントで50~100名ほどの生徒を指導でき、特別な設備も不要なので、設備投資も最小限で済みます。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟教室数 |
加盟金:150万円 学習システム導入費:200万円 研修費:50万円 | なし | 要問い合わせ | 300校以上 |
個別指導学院ヒーローズ
- 1コマ1,000円の個別指導塾
- オーナー同士のネットワーク
- 加盟金、保証金、研修費0円のオールフリープラン
個別指導学院ヒーローズは1コマ1,000円の安価な授業料が特徴の塾チェーンです。低価格で授業を行うため集客に強く、生徒の通塾回数を増やしやすいです。通塾回数が増えれば生徒・保護者からの信頼にもつながります。途中でやめる生徒を減らすためにも、紹介を増やすためにも有効な仕組みです。
オーナー同士のネットワークがあり、情報交換や勉強会などが盛んに行われています。他オーナーのリアルな実例を参考に、経営安定化を目指せるでしょう。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟教室数 |
スタンダードプラン:297万円 オールフリープラン:0円 | 生徒1名の入塾に対して6,000円 その他売上の10% 生徒管理費300円/1名 | 要問い合わせ | 250校以上 |
個別指導アクシス
- 黒字校舎の引継ぎプランあり
- 合格実績を出せる学習システム
- 生徒20名までロイヤリティなし
個別指導アクシスは充実した合格実績を誇る個別指導の進学塾です。グループすべての成功ノウハウを活かし、合格実績を高めるための学習システムを構築しています。合格実績を活用した集客も盛んです。
黒字の直営校の譲渡プランがある、生徒20名までロイヤリティが発生しないなど、教室運営を軌道に乗せるための仕組みが充実しています。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟教室数 |
760万円 ※物件取得費や工事費を含む | 22万7,500円 ※生徒50名の場合 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
明光義塾
- 教室数No.1の個別指導塾
- 全国の加盟店からデータを集め、経営支援に活用
- 小中高校向けの独自教材
明光義塾は教室数No.1、圧倒的な知名度を誇る個別指導塾です。加盟店オーナーに独自の学習・経営支援システム「METIS Network」を提供し、経営をサポートします。システムはインターネットを介して本部と各教室とつながっていて、教室運営に関するさまざまなバックアップを受けられます。
進学塾のイメージが強い明光義塾ですが、小学生や中学生向けのカリキュラム・教材も提供しています。受験生はもちろん、補習塾として幅広い年齢の生徒に対応でき、経営を安定させやすいでしょう。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟教室数 |
495万円 ※講師採用費を含む | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
個別指導WAM
- オンライン授業に対応
- AI学習を活用した最先端のカリキュラム
- 業界最高水準の事業継続率
個別指導WAMは塾業界でもいち早くオンライン授業に対応したチェーンです。生徒はスマホやタブレットからオンライン授業に参加できるため、「夕方から塾に通わせるのは心配」という保護者にとっても安心感があり、集客の幅が広がるでしょう。
AI学習を活用した最先端のカリキュラムを提供していること、今日室長は授業をせず経営に専念できることなどから、業界最高水準の事業継続率を誇ります。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟教室数 |
要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
学習塾のフランチャイズに加盟するメリット
学習塾のフランチャイズに加盟する3つのメリットを紹介します。
チェーンのブランド力・集客力を活かせる
学習塾のフランチャイズに加盟する1つ目のメリットは、「チェーンのブランド力を活かせる」ことです。
知名度の高いチェーンなら、その看板を掲げているだけでも生徒を集められるでしょう。本部がチェーンのテレビCMや広告を出したり、キャンペーンを行ったりすることもあります。
カリキュラムを提供してもらえる
学習塾のフランチャイズに加盟する2つ目のメリットは、「カリキュラムを提供してもらえる」ことです。
個人塾の場合、カリキュラムや教材は自力で作らなければなりません。学年・教科別のカリキュラムをすべて自力で作るには時間と労力がかかります。時代や学習指導要領の変化を捉え、カリキュラムを改善し続ける努力も必要です。
フランチャイズに加盟すれば、本部が作ったカリキュラムを提供してもらえます。カリキュラムの改善も、各教室のデータを分析しながら本部が行ってくれるでしょう。
チェーン独自のシステムを使える
学習塾のフランチャイズに加盟する3つ目のメリットは、「チェーン独自のシステムを使える」ことです。
チェーン展開する塾には生徒や保護者向けのアプリ、事務作業のためのシステムを提供しているところもあります。これらの独自システムは、集客や業務効率化に役立ちます。
たとえば生徒が塾に来たこと、帰ったことを通知してくれるアプリがあれば、保護者の安心感を高められるでしょう。ほかにも生徒管理を効率化するシステム、オンラインで月謝を集金できるシステムなど、経営効率化のためのシステムがあると便利です。
学習塾のフランチャイズに加盟するデメリット
学習塾のフランチャイズに加盟する3つのデメリットを紹介します。
自由度が低い
学習塾のフランチャイズに加盟する1つ目のデメリットは、「自由度が低い」ことです。
フランチャイズの塾はチェーンごとにルールやカリキュラムが決まっています。教材も本部が用意したものを使わなければならず、経営の自由度は低いです。やりたいことが具体的な人、教育に対する自分なりの理念がある人にとって、フランチャイズは窮屈に感じるかもしれません。
コストが割高
学習塾のフランチャイズに加盟する2つ目のデメリットは、「コストが割高」なことです。
塾に限らず、フランチャイズで開業する場合、加盟費やロイヤリティなどの支払いが発生します。本部から教材や備品を購入したり、独自システムを使ったりするのにも費用がかかるでしょう。フランチャイズは個人経営に比べてコストが割高になりやすいです。
特に塾のフランチャイズはロイヤリティの相場が10~15%と、他業界と比べて割高です。たとえば飲食業ならレストランで2~8%ほど、キッチンカーやカフェなどではロイヤリティなしのチェーンも珍しくありません。
廃業しづらい
学習塾のフランチャイズに加盟する3つ目のデメリットは、「廃業しづらい」ことです。
一般的に、フランチャイズ契約には契約期間や競業避止義務などの定めがあります。競業避止義務とは、同じ業種での開業を制限する義務のことです。この義務があると、フランチャイズに加盟している間はもちろん、解約後数年間は同業種(塾)での開業が制限されます。
契約期間内で解約(廃業)すると違約金がかかったり、解約後も数年間は他チェーンの塾や個人塾を開けなかったり、何かとリスクがあります。
学習塾のフランチャイズで開業する流れ
学習塾をフランチャイズで開業するおおまかな流れは次の通りです。
STEP1.情報収集
まずはどんなフランチャイズがあるのか、公式HPを見たり資料請求をしたりして情報を集めます。ここでは塾のタイプや指導スタイルにこだわらず、なるべく多くのチェーンの情報を集めましょう。
補習塾や進学塾、オンライン塾といった「塾のタイプ」を絞り込んでしまうと、理念や方向性の面で相性がいいチェーンを見逃してしまうかもしれません。フランチャイズでの塾経営ではチェーンのブランド力や集客力、稼げる仕組みがあるかといったことも大切ですが、本部と考え方が合わなければ経営が嫌になってしまうでしょう。
STEP2.説明会参加・個別相談会
情報を集めるなかで気になるフランチャイズを見つけたら、説明会に参加してみましょう。説明会でそのチェーンへの興味が深まったら、個別相談会に申し込むのもいいでしょう。
個別相談会ではそのチェーンの理念や方向性、フランチャイズ加盟のリスクなど、気になることや不安なことを遠慮なく聞いてみてください。特にリスクについて聞くことは大切で、隠したいようなことも正直に教えてくれる本部が、信頼できる本部といえます。
STEP3.加盟店申し込み・開校準備
加盟するチェーンを決めたら、いよいよ加盟申し込みです。契約期間や違約金、競業避止義務など、契約書の内容をよく確認したうえで契約を結びましょう。契約書にわからない部分や不安な部分があれば、サインをする前に担当者や本部に確認してください。
加盟契約を結んだら、担当者と一緒に開校準備を進めていきます。チェーンによっては開校場所を提案してくれるところもあります。立地は集客に大きく影響するので、その場所まで実際に足を運び、慎重に判断しましょう。
学習塾のフランチャイズは慎重に選ぼう
フランチャイズはチェーンごとのルールがあり、個人経営と比べて自由度が低いです。チェーンへの加盟費や月々のロイヤリティなど、コストも何かとかさみます。
特に学習塾は初期費用・運転資金ともにコストがかかりやすいこと、教育に対する考え方や方向性の違いが起こりやすいことなどから、慎重に加盟チェーンを選ばなくてはなりません。
本記事で紹介したチェーンのなかで気になるところがあったら、まずは公式HPをチェックしてみてください。加盟費やロイヤリティ、本部の理念や方向性などの詳細は、説明会に参加するとよくわかるでしょう。
なるべく多くのチェーンの説明会に参加し、気になるチェーンを見つけたら個別相談会に申し込んでみてください。フランチャイズによっては社長自らが個別相談に応じてくれることもあります。営業担当者や社長と1対1で話すことで、チェーンの理念や方向性が見えてくるでしょう。