自己資金ゼロで飲食店を開業することは可能
飲食店は開業資金が大きく、自己資金なしでの開業は難しいというイメージが強いです。しかし、いくつかの条件を満たせば、自己資金ゼロで開業することも不可能ではありません。
飲食店開業に必要な資金の目安
飲食店を開業するには、店舗の賃料や改装費用、設備投資、運転資金など、さまざまな費用がかかります。業態や規模によって異なりますが、一般的には500万円から1,000万円強の資金が必要とされます。
飲食店開業における自己資金と融資額の割合
自己資金ゼロで開業する場合、必要な資金をすべて融資で賄うことになります。金融機関では、自己資金が一定額以上ないと融資を受けられない場合が多いですが、近年では自己資金ゼロでも融資を受けられる制度も登場しています。
一般的には、融資額は開業資金全体の70%~80%程度までとなります。残りの20%~30%は自己資金で賄う必要があるため、ある程度の貯蓄は必要です。
自己資金ゼロでも「新創業融資」を受けられるケース
自己資金ゼロで飲食店を開業するためには、融資を利用するのが一般的です。中でも、日本政策金融公庫が提供する「新創業融資制度」は、自己資金がなくても融資を受けられる可能性があります。
現在勤めている企業と同じ業種で開業する場合
新創業融資制度では、現在勤めている企業と同じ業種で開業する場合は、自己資金の要件が免除されます。これは、すでに業界経験があり、事業成功の可能性が高いと判断されるためです。
認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める場合
認定特定創業支援等事業は、創業希望者に対して、専門家によるコンサルティングや研修を提供する事業です。この事業を受けて事業を始める場合、自己資金がなくても融資を受けられる可能性があります。
認定特定創業支援等事業には、以下のようなものがあります。
- 創業支援拠点
- 中小企業基盤整備機構による創業支援事業
- 都道府県・市町村による創業支援事業
これらの事業を利用することで、事業計画の作成や資金調達など、開業に必要な知識やスキルを身につけられます。
融資の審査を受けるときの注意点
自己資金ゼロ、あるいは少ない自己資金で飲食店を開業するためには、融資の審査を受ける必要があります。融資審査は、金融機関が貸し出したお金が返済されるかどうかを判断するためのものです。審査に通るために意識したいポイントを紹介します。
どんな資金が自己資金として認められるか確認する
自己資金として認められるのは、預貯金だけでなく、退職金や生命保険の解約返戻金なども含まれます。ただし、借入金は自己資金として認められないため、注意が必要です。
金融機関によって、自己資金として認められる資金の範囲が異なる場合があり、事前に確認しておくことが重要です。
事業計画書を作り込む
融資の審査では、事業計画書の質が重要視されます。事業の成功可能性を判断する材料となるため、時間をかけて丁寧に作成しましょう。具体的には、次のような内容をわかりやすく、データを盛り込みながら記載することが重要です。
- 事業コンセプト
- 市場分析
- 競合分析
- 収益計画
- 資金繰り表 など
個人の信用情報に傷をつけない
個人の信用情報に傷があると、融資を受けられない可能性があります。信用情報には、過去の借入履歴や返済状況などが記録されています。
クレジットカードやローンなどの支払いを滞納すると、信用情報に傷がつく可能性があります。融資を希望する場合は、日頃から信用情報に気を配るようにしましょう。
少ない自己資金で飲食店を開業する方法
飲食店を開業するには、初期費用や運転資金など、多額の資金が必要です。しかし、自己資金が少なくても、いくつかの方法を組み合わせることで開業の夢を実現できます。
新創業融資を利用する
自己資金がなくても開業資金を調達できる方法として、日本政策金融公庫の新創業融資制度が挙げられます。この制度は、創業希望者に対して、無担保・無保証で最大3,000万円までの融資を受けられるというものです。融資を受けるためには、事前に事業計画書を作成し、金融機関に提出する必要があります。事業計画書には、事業コンセプト、市場分析、競合分析、収益計画など、事業内容を具体的に記載しましょう。
知人から資金を借りる
自己資金の一部または全部を親族や友人から借りるという方法もあります。この方法は、融資審査を受ける必要がないため、比較的簡単に資金調達できます。
ただし、知人から借りる場合には金銭トラブルに発展しないよう、事前に借用書を作成しておくなど約束事を明確にしておくことが重要です。
補助金・助成金を活用する
国や自治体では、創業を支援するための補助金や助成金制度を設けています。これらの制度を活用することで、開業資金の一部を補助してもらえます。補助金・助成金の種類はさまざまで、申請条件や受給額も異なります。詳しくは、国や自治体のホームページなどで確認しましょう。
補助金も助成金も融資と異なり返済が必要ありません。ただし、基本的には後払いであるため、ある程度の自己資金は必要です。
なお、補助金には定員があるため要件を満たしていても受給できないことがあります。助成金には定員がなく、要件を満たせばほぼ確実に受給できます。
クラウドファンディングを活用する
近年、自己資金を抑えながら開業資金を調達する方法として、クラウドファンディングが注目されています。クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める仕組みです。
クラウドファンディングで資金調達するには、まずプロジェクトページを作成し、事業内容や目標金額などを掲載する必要があります。プロジェクトページは、多くの人に事業の魅力を伝えるための重要なツールです。
フランチャイズに加盟する
フランチャイズに加盟すると本部が店舗用の土地や建物を用意してくれることがあり、初期費用を抑えて開業できることがあります。すでに成功しているビジネスモデルをそのまま利用できるため、経験不足を補ったりリスクを抑えたりすることもできます。フランチャイズ本部から経営ノウハウやサポートを受けられるため、事業の成功確率を高められるでしょう。
ただし、フランチャイズに加盟するには、加盟料や初期費用を支払う必要があります。また、ロイヤリティや広告宣伝費などのランニングコストも発生します。
開業資金を抑えられる業態を選ぶ
開業資金を抑えられる業態を選ぶことも重要です。たとえばキッチンカー、テイクアウトやデリバリーの専門店などは、店舗の規模を小さくしたり設備を簡素化したり、初期費用を抑えやすいです。
費用を抑えて開業できる飲食業
先述のとおり、費用を抑えて開業できる業態を選ぶことで、少ない自己資金でも飲食業をはじめられるかもしれません。費用を抑えて開業できる飲食業の業態を4つ紹介します。
キッチンカー
近年人気を集めているのが、キッチンカーを使った移動販売です。キッチンカーは店舗を構える必要がないため、初期費用を大幅に抑えられます。また、場所を選ばずに営業できるため、さまざまな顧客層にアプローチできます。
キッチンカーで販売する商品としては、軽食やスイーツなどが人気です。近年は、本格的な料理を提供するキッチンカーも増えてきています。
テイクアウト専門店
おうち時間への注目や飲み会の減少などにより近年需要が高まっているのが、テイクアウト専門店です。テイクアウト専門店は客席を設ける必要がないため、店舗面積を小さくできます。厨房設備も簡素化できるため、テナント代以外の初期費用も抑えられます。
テイクアウト専門店では、お弁当やサンドイッチ、惣菜などが人気です。近年は、タピオカドリンクやドーナツなど、スイーツ専門のテイクアウト店も増えてきています。
デリバリー専門店
テイクアウト専門店と同じく需要が高まっているのが、デリバリー専門店です。客席を設ける必要がなく店舗面積を小さくできること、厨房設備も簡素化できることも、テイクアウト専門店と同じです。
テイクアウト専門店と比べると、立地に左右されずに集客できるメリットがあります。ただし、デリバリーのための人件費がかかるデメリットがあります。
高齢者向け配食サービス
高齢者向け配食サービスは、高齢者や独居老人向けに、食事を配達するサービスです。近年、高齢者人口の増加や核家族化の影響により、需要が高まっています。ここまで紹介してきた3つの業態よりも固定客がつきやすく、経営が安定しやすいメリットもあります。
高齢者向け配食サービスでは、栄養バランスが考慮された食事を提供することが重要です。また、高齢者のニーズに合わせた、さまざまなサービスを提供する必要があります。そのため、フランチャイズに加盟して開業する場合、チェーン選びが特に重要です。
【実店舗】低コストで開業できる飲食店
低コスト・資金ゼロで開業できる飲食業のうち、少ない資金で店舗を構えられるフランチャイズを紹介します。
Café Hanamori
- カフェ、バル、テイクアウト・デリバリーの三毛作カフェ
- 初期費用1,000万円以下で開業できる
- 自由度が高く、オリジナルの店が持てる
Café Hanamoriは、モーニング、ランチはカフェ、夕方からはバル、テイクアウト・デリバリーもできる三毛作カフェのフランチャイズです。
運営元である株式会社sommet farmは不動産会社、工務店、人材会社、スーパーバイザーをグループ会社で賄えるため、圧倒的なコストカットができ、飲食業界では破格の初期費用1,000万円以下での開業を実現しています。
Café Hanamoriでは、営業時間、メニュー、内装などをオーナーが自由に決められるため、フランチャイズであってもオリジナルの店を持てることが特徴です。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟店舗数 |
加盟金:100万円 データ支給費:50万円 物件取得費:100万円 開業費:50万円 | 売上の3% | 5年 | 30店舗 |
ジェリーズポップコーン
- ロイヤリティ0円、低資金&副業可のポップコーン販売
- 廃棄ロスがほぼ無し
- 手厚いサポート体制
ジェリーズポップコーンは、移動販売だからこその低コスト・低リスクで開業することができ、一坪の場所があればどこでも出店できます。また、営業日時や時間も自由に設定できるので、土日だけの営業など副業としても開業できます。
ポップコーンの材料は消費期限が長く、材料のロスがほとんどないのもうれしいポイントです。
本部研修を2日、出店研修を2日行い、ノウハウの提供やサポートを受けられるため、未経験でも安心して開業できます。ショッピングモールや大手スーパーを中心に全国から出店オファーがあるため、開業後もスムーズに運営できます。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟店舗数 |
加盟金:98万円 内訳・加盟権利金:46万円 ・研修費:29万円(本部研修2日間、出店研修2日間) ・商標の使用権利金及びノウハウ開示:23万円 機材備品(マシーンを含む50アイテム):78万8,800円 合計:約177万円 ※すべて税別 | 0円 | 2年間 ※以降2年毎に自動更新(更新料なし) | 要問い合わせ |
鶏白湯専門店 つけ麺まるや
- ライバルが少ない鶏白湯スープ専門店
- 簡単調理でコストカット
- オーダーメイドの開業プランを提案可能
つけ麺まるやは、「鶏白湯スープ」と「つけ麺」という新しい市場を開拓中のラーメン屋です。ラーメン市場は大きな市場ですが、鶏白湯スープを扱う店は少ないため、開業エリアによっては大いに成功のチャンスがあります。
各フランチャイズ店に完成したスープを配送する「本格スープ配送システム」を導入しているため、仕込みや調理の負担を軽減できます。
ビジネスを通して地域を活性化させたいというオーナーのために、それぞれの地域、環境、オーナーの希望に合わせた開業プランの提案が可能です。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟店舗数 |
要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 7店舗(2024.3月時点) |
【店舗以外】低コストで開業できる飲食業
低コスト・資金ゼロで開業できる飲食業のうち、店舗を持たずに運営できるフランチャイズを紹介します。
かさねや
- 宅配とんかつ専門店
- 研修中も月30万円保証
- 開業資金0円でも開業可能
かさねやは、全国に100店舗以上ある宅配とんかつ専門店です。宅配専門のため、店舗の立地条件に左右されないというメリットがあります。
3ヶ月間店舗運営に必要な研修も受けられ、その間も月30万円の報酬が保証されています。
店舗も厨房もバイクもすべて本部が用意してくれるため、店舗取得費や設備投資などの費用もかからず、開業資金0円でも開業ができます。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟店舗数 |
0円 | 売上の5% | 2年 | 直営加盟店あわせて170店舗 |
高齢者向け配食サービス まごころ弁当
- 豊富な商品力
- 安定収益
- 低コスト
まごころ弁当は、高齢者向け配食サービスのフランチャイズです。一般の高齢者向けメニューだけでなく、カロリーや塩分計算が必要な方向けのメニューや嚥下困難な方向けのムース食など5種類のメニューを提供しています。管理栄養士との共同メニュー開発や冷蔵食材主体のメニューを通してお客様の幅広いニーズに対応します。
高齢者向けの市場は今後も成長が期待できます。地域福祉関連施設やケアマネージャーに対する営業ノウハウも構築されているため安定した収益が見込めます。
2等、3等立地での出店や中古品を有効活用した出店コストの削減、受注生産によるロスの削減で低コストでの開業・運営を実現しています。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟店舗数 |
加盟金:0円 保証金:0円(審査あり) システム料:0円 厨房機器:0円〜90万円 工事代:0円〜150万円 ※店舗取得料は含まず | 0円 ※会費:月3万円 | 5年 | 532店舗(2024年2月時点) |
ONKURIチェーン
- ボランタリーチェーンの配食サービス
- 加盟金・ロイヤリティ・保証金0円
- 仕入れコスト10%低減を実現
ONKURIチェーンは、高齢者向けの配食サービスを提供しています。フランチャイズより自由度の高いボランタリーチェーンを採用しており、看板や販売価格を自由に決められたり、新たなメニューを加えることも可能です。
加盟金・ロイヤリティ・保証金が0円のため、開業資金やランニングコストが安く、低資金で開業できます。
自社グループで献立から配送までを一貫して行うため、食材原価も業界最安値を実現しました。そのため、パートナーの負担をできる限り少なくできます。
開業資金 | ロイヤリティ | 契約期間 | 加盟店舗数 |
0円 | 0円 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
自己資金ゼロで飲食店を開くことは可能だが、難易度とリスクは高い!低資金で開業できる方法・業態を選び、貯金しよう
自己資金ゼロで飲食店を開業することは可能ですが、難易度とリスクは高いです。 資金調達には、融資やクラウドファンディングなどさまざまな方法がありますが、いずれも審査や返済義務、時間と労力がかかるなどの課題があります。
低資金で開業できる方法として、フランチャイズへの加盟、キッチンカーやテイクアウト専門店などの開業費用が少ない業態を選ぶという方法が挙げられます。
いずれの方法を選択する場合でも、成功するためには綿密な計画と努力が不可欠です。事業計画をしっかりと立て、資金調達、物件探し、メニュー開発、宣伝活動など、開業準備を慎重に進めましょう。
また、飲食業は競争が激しく、失敗率も高い業種です。自己資金ゼロで開業する場合は、リスクを十分に理解し、貯金をしておくことも重要です。
自己資金ゼロで飲食店を開業することは、決して簡単ではありません。しかし、強い意志と覚悟を持って努力すれば、夢を実現することは可能です。
本記事で紹介したフランチャイズのなかに気になるところがあったら、まずは公式HPをチェックしてみてください。加盟費やロイヤリティ、詳しいサポート内容など、わからないことがあったら問い合わせをしてみましょう。なるべくたくさんのチェーンの情報を集め、自分に合ったところを選ぶことが大切です。